10年の月日にて

公開日: : お知らせ, コラム

アンティーク時計父が亡くなって、約3か月。新盆もすみあっという間。時間が経つのは早いものだ、と、妙に思う。別にその前までも早かったから大して変わらない気もするのだけれど。ともあれやっといろいろなことが一段落してきた。

このあたりで困ったことがいくつかできた。そのひとつが、「ご愁傷様です。寂しいでしょ?」とお言葉をいただくこと。確かに私も知らせを受ければ同じ気持ちで返していたと思うのだけれど、これに関しては、正直、どうこたえていいのかわからない。哲学、親子関係、死に至るまでの状況、等々でいろいろな感情や考えがあると思うのだが、私、今のところ、まったく寂しくないようだ。

父は10年前に旅先で大動脈解離を発症し倒れた。その時、「あと5ミリ大動脈瘤乖離が進んだら、アウトです。今そうなってもおかしくない状況です。」と言われ、それから、肝臓、腎臓、あらゆる臓器が不全状態、果てまた、脳梗塞を起こしたらしい後も検査をすれば見つかる。まさにもぐらたたきをしているような状況である。その都度、いつ何があってもおかしくはないので。と医者から言われる。そして10年。かくも長き年月で、振り返ってみればきっと両手×両手の回数ほどの宣告を聞いてきた。医者にも聞いていたが、「明日かもしれないし、朝起きたらということもあるかもしれないし、身体的にはこういうことですが、その人の寿命もあり、こればっかりは何とも。。。」だそうで「‘何時’って何時ですか?」という状態を続けてきたのである。とはいえ本人は食べることは大好きで、しっかり食べて好きなようにすごしていた。奇跡といえばいいのか、徳がなさ過ぎてこの世ですべきことがあったのか、すでにあの世にいる身内に、世話をするのが大変だからと追い返されたのか、‘何時か’がいつか分からない。

医者も家族も長くはないとおもって始まった介護だったので、本人が好きなようにしていたし、こちらも覚悟し対応もしてきたつもり。でも、父はわがままなのだ。一人っ子だったせいか、病気のせいか、いや昔から、なんというかわがままなのだ。‘何時かが近いらしい’とできることをしていると、キリがない。終わらない。増えていく。

まーいつか‘何時か’が来るでしょうと、覚悟して介護をしてきた私にとって、もうすべき事もないし、覚悟にカビが生え、とりあえず、その時々目の前のことをいつか来る‘何時か’のためにしてきた自負はある。そして何より、自分の生活や仕事を続けるということ、家族の在り方、介護の時の長さが、覚悟を熟成させ、あるがままにうけとめているということになったのだろう。

まー、言いたいことはたくさんある。文句もある。それでも、一人の人生を全うするのをさわやかに見届けられた、それなりに精一杯お互いにやりとげたのであれば、死ということも幸せなかたちにすることができたのではないかと思っている。

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